正しい“杖”を持つ手、握り方

 こんにちは、理学療法士のnaruです🌈

 前回は、正しい杖の選び方と合わせ方を解説しました。まだ読んでいない方は、是非そちらから読んでみてください。

 リハビリ指導をしていると、杖を持つ手が左右逆だったり、握り方が違ったり、足のリズムと合っていないという方が結構いらっしゃいます。

 T字杖は福祉用具の専門店でなくても、ホームセンターやスーパーの介護コーナー、最近では100円均一でも見かけるようになりました。それだけ需要があるということですが、手軽に買えるがゆえに、

正しい使い方を習わずなんとなくで使っている方が多いと思われます。

杖は便利なものですが、使い方を誤ると十分な効果が期待できなかったり、逆に転倒の危険性が増してしまいます💦

 そこで、今回は正しい杖の持ち方について、理由も踏まえて分かりやすく解説していきます!

杖を持つ手は悪い足とは反対側

 リハビリ介入の初回でよくお見掛けする現象…それは、【利き手で杖を持っている】です。

 それで間違いでない場合ももちろんあるのですが、全体的に見て殆どの方が利き手で持ってらっしゃいます。しかし、杖を持つ手は、原則悪い脚と反対側の手になります。つまり、右脚が悪いのであれば左手、左脚が悪いのであれば右手で持つのが正解となります。

 歩行の際に一番支えが必要な場面は、ずばり『立脚(片足立ち)』になります。歩行は片足立ちの連続運動で、片足立ちでは支持基底面は足裏一つ分しかありません。それを交互に連続してと考えると、歩行は相当に難しい動作だと分かってもらえるかと思います。

 では、この難しい歩行の中で、より支えが必要なのは良い脚と悪い脚どちらなのでしょうか?当然、悪い脚になります。痛みがあったり麻痺があったりする足で片足立ちをするのは至難の業です。ですが、2本の足で歩くとなったら、片足立ちができなければなりません。

 そんな悪い脚の立脚を補助するのが杖の役目です。

 杖は患側の足を支えるのに必要、ということが分かったところで、じゃあなんで患側の手で持たないの?と疑問に思う方もいらっしゃるかと思います。確かに、止まった状態(両足が床に接地してる状態)だったら患側の手で支えた方が免荷しやすいです。

 ここで思い出していただきたいのが、支持基底面です。支持基底面は、床に接している面と、それらを繋ぐ線の面積のことで、それが広いほど安定します。杖を患側でついたときと、反対側でついたとき、そのどちらの支持基底面が広いかは下図を見ていただいたら一目瞭然かと思います。

支持基底面は、地面に設置する面や点が離れている方が広がります。杖のように、接地している点の面積自体が狭くても、重要なのはそれらを繋いだ面積の広さです。その面積内に重心を維持すれば安定して姿勢が保てるからです。

 もしこれを読んでいて患側と同じ手で杖を持っている方がいらっしゃったら、是非反対の手で持って歩いてみてください。安定性が増し、足の負担もだいぶ変わると思います!

杖は正しく握りましょう

 さて、杖を持つ手が分かったところで、次は杖の持ち手(以下、グリップ)の持ち方です。左右どちらの手で持つかに対して、グリップの持ち方は半数以上の方が正解の持ち方をしている印象があります。しかし、中には杖の前後を逆に持っている方もいらっしゃいます。また、支柱を挟まずに持っているパターンも何度かお見受けしたことがあります。

 グリップの正しい持ち方はこちらです。

 なぜこの持ち方がいいかと言うと、掌の真下に支柱があることで安定して体重を掛けることができるからです。また、杖の支柱を指で挟んで固定できるのも利点で、上手の杖のように、支柱の根元がくびれて細くなっている方が指で挟みやすく、安定性が増します。

次に、誤った持ち方を紹介します。

左の持ち方は一見正しい持ち方のように見えますが、親指と人差し指で支柱を挟んでいません。この持ち方をしてしまうと、掌の真下に支柱がないため、体重を掛けた時にグラグラして不安定になってしまいます。

右の持ち方は杖の前後が逆になっています。これの何が悪いかというと、支柱に体重が掛けにくいことに加えて、手の力を上手く地面に伝えることができないため、より不安定になり転倒リスクが高まってしまいます。

まとめ

今回は、正しい杖の持ち方について解説しました。

◎杖を持つ手は悪い脚と反対の手!

悪い方と反対の手で持つことで、支持基底面が広がって安定します。

◎グリップは支柱を挟んで握る!

支柱を挟まずに体重を掛けると重心が不安定になります。また、杖の前後を逆にしてしまうのも重心がブレる原因となります。

次の記事では、杖での歩き方について解説していきます。

以上、最後までお読みいただきありがとうございました🌈

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